山野穴太のいまどきナースこぼれ話

2017年06月06日
第112回 ナースのだてマスク

ごく最近、職場近くに住みついていた2匹の仔猫を保護した。職場の屋外駐車場の奥で毎晩エサ皿を並べては、30~60分ほど近くで待機したのち、すべて回収して帰る生活。職場では「おまえがエサをやるから野良猫が集まる」と、もっともらしい理屈をつけて非難してくる者もいる。不愉快ではあるが、言いたいこともわかる。ただ、彼らだって産まれてきた以上、生きて行く権利がある。わが輩とて、ただエサを与えて愛でているわけではない。野良猫増加による殺処分や、飢えや病気による死など、悲しい結果を少しでも減らしたいため、こうして猫を保護したり去勢手術を受けさせたりしているのだ。またそれができなくとも、一日わずかではあるが、こうしてエサをもらっているから、職場やあなたの家のゴミを荒らしたり、鳩などを襲って残骸を散らしたりしないのだよと言い返したいが、皆にそれを理解してもらうのはなかなか難しいので、無視することにしている。
 保護した2匹の仔猫は母猫が連れてきた。周りの人が言うには、路地奥の廃屋あたりにあと4匹仔猫がいるらしいが、家主が裏木戸を締めているので保護できない。おそらく、この暑さだと生存は難しい。せめて保護した2匹には、彼らの分まで幸せになってほしい。といっても、もらい手候補を2~3あたってみたが、すでに仔猫を引き取っていたので、わが家で60数匹と暮らすしかない。「まぁ、それもよし」と、半額パンを冷凍して食っているわが輩は、苦笑いである。

 さて、今回も元ひよこの愚痴
 近頃、巷にはやるもの。だて眼鏡に、だてマスク。
 看護の現場では、さすがにだて眼鏡は珍しいが(血液などが多く飛散する職場では別かな)、だてマスク着用者はあちこちにいて、目障りでしょうがないという。なぜ目障りなのかと聞くと、「だてだから」とわけのわからない答えが返ってきた(笑)。

 一般的に、マスクはウイルスや花粉その他が気道から侵入するのを防ぐために使用する。しかし巷では、「顔を隠すと安心する」「人と話さなくてすむ」、逆に「人と気楽に話せる」といった心理的なものから、「食後の口臭が気にならない」といったエチケット用として、はたまた「マスク姿がかっこいい」といったファッションアイテムとしてなどなど、本来の衛生上の目的外で使用することがあるらしい。

 看護の現場では「人と話さなくてすむ」が理由ではなかろうが(それでは仕事にならない)、ほかの理由はナースも似たり寄ったりなのだろうか。元々はオペ室ナースの室外姿に起因するのだろうが(最近では、医者のはオペ着での室外歩きや記者会見にはクレームが多いが、ナースはそれほど注意されないのかな)、顔を半分隠すのがミステリアスでかっこいいとでも思うのか、あるいは、七難隠してきれいに見えるのか、またあるいは、個人が同定されにくい(余計なことで声をかけられない?)などなどで広まったのであろうか。
 しかし、わが輩やうちの同居猫に言わせると、ブルーやグリーンのオペ着とペアのマスクだと確かに見た目もおしゃれなのだろうが、白衣に白の使い捨てマスクでは、「おや風邪でもおひきかい? うつさないでおくれ」で終わりそうである(笑)。

 一方、お偉方にとってやっかいなのは、だてマスクかどうかの区別がつかないことである。よしんば区別がついたとて、だてマスクだから外せともいえず、どうにかなるものではない。感染症の蔓延を防ぐためにマスクは必要ではあるが、必要外の部分でむやみやたらと着用されると、患者さんの心証を損ないかねないし、困ったものであるらしい。

 確かに、ナースのマスク姿は患者さんに余計な心配をさせてしまう。「あの病院のスタッフはやたらとマスクをしているので、院内でインフルエンザが蔓延しているのかしら、受診するのやめようかな」とか、「花粉症のナースに処置してもらうの、くしゃみのついでに針先があらぬ方向にいかないかしら」といった具合である。一方、風邪引き患者さんにしてみれば、「私の風邪がうつらないように防御しているのかな、なんか感じ悪いな」と思うかもしれない。まあ、患者さんや、上司の気持ちは上のようなものだろう(おっちゃん、ずいぶんはしょったな)。

 ところが、現場のヒヨコに聞いてみると、現実はもっとシビアなものであった。ナースがインフルエンザウイルスなどを媒介し(あるいは感染源となって)、患者さんに感染を広めでもしたら大変である(本音は、上司や患者さんに何を言われるかわかったものではない。事の大きさによってはマスコミ騒ぎにだって発展しかねない)。だてマスクといわれようが、マスク依存症(マスクを外せない精神状態、自分を知られないための防御反応)といわれようが、「マスクをして我が身を守っておかないと、不安です…!!」となるようだ。

注)株式会社プラネットのアンケートによると、だてマスク経験者は20.7%。男女別にみると女性のだてマスク経験者は33.9%(3人に1人)。年代別にみると、「だてマスクをしている人」は20代女性が44.9%と最も多く、「だてマスク経験者」は53.1%らしい(又聞きならぬ某サイトでの又読み)。