インフェ速報

2016年02月08日
25巻4月号記事:妊婦のためのジカウイルス感染症ガイドライン(連載「月刊CDCガイドラインニュース」より)

中南米を中心に、ジカウイルス感染症による小頭症が多数報告されている。ほとんどの人は無症状であり、症状があっても軽度であるが、妊婦が感染すると胎児の小頭症を引き起こすことがある。ここではCDCが2016年1月に公開した「ジカウイルスのアウトブレイク期間における妊婦のための暫定ガイドライン」を解説する。


【ジカウイルス】

 ジカウイルスは蚊媒介のフラビウイルスであり、主にネッタイシマカによって伝播する。この蚊はデングウイルスおよびチクングニアウイルスも伝播できる。ジカウイルスに感染した人の約80% が無症状である。症状がある場合でも一般的に軽度であり、突然の発熱、斑点状丘疹、関節痛、膿のない結膜炎が特徴である。症状は通常数日から1週間続く。入院を必要とする重症化は通常はみられず、死亡はまれである。


【妊婦とジカウイルス】

 ブラジルでの現在のアウトブレイクで、小頭症を合併して出産した新生児の数が著明に増加している。ジカウイルスは妊娠のどの時期であっても感染し、母子感染が妊娠期間を通じて確認されている。実際、小頭症の新生児でジカウイルスが確認されている。ジカウイルスRNA が死亡胎児の病理検体で検出されているが、ジカウイルスが胎児死亡を引き起こしたかどうかは不明である。


【妊婦の流行地域への旅行】

 妊婦はジカウイルスの流行地域に旅行することを延期するのが望ましい。もし、旅行するならば、蚊に刺されないように厳重な対応をする。ジカウイルスを伝播する蚊は室内および屋外でヒトを刺す。多くは昼間に刺すが、全日を通じて蚊に刺されないようにすることが大切である。その対策としては「長そでのシャツやパンツ」「防虫剤」「ペルメトリン処理の衣類や服装」「蚊帳かエアーコンディションのある部屋の利用」がある。


【流行地域への旅行歴のある妊婦】

 医療従事者はすべての妊婦に最近の旅行歴について質問すべきである。妊娠中に流行地域に旅行した女性はジカウイルス感染について評価する。ジカ、デング、チクングニアの地理学的分布および臨床症状は似ているので、ジカウイルス感染症に一致した症状のある患者はデングウイルスおよびチクングニアウイルスについても評価する。


【妊婦の検査】

 ジカウイルスの検査は、症状のある妊婦に実施するが、発症1週間以内であればRT-PCR、発症から4日以上経過すればIgMおよび中和抗体を検査する。胎児の小頭症もしくは脳内石灰化がなければ、無症状の妊婦の検査は推奨されない。
 RT-PCRは羊水で実施できる。羊水穿刺は妊娠24週以内に実施すると0.1%の胎児死亡の危険性がある。妊娠15週以後での羊水穿刺は妊娠早期での穿刺よりも合併症が少ない。したがって、早期(妊娠14週以内)の羊水穿刺は推奨されない。羊水でのRT-PCRの陽性結果は子宮内感染を示唆している。


【ジカウイルス感染症と診断された妊婦の治療】

 ジカウイルス感染症に有効な抗ウイルス治療はない。治療は補助療法であり、それには休息、水分、鎮痛剤および解熱剤が含まれる。発熱はアセトアミノフェンで治療する。通常、妊婦にはアスピリンおよび非ステロイド系抗炎症薬は使用しないが、これらの薬剤はデングが除外されるまでは、出血の危険性を減らすために避ける必要がある。血清もしくは羊水の検査でジカウイルス感染の疑いのある妊婦には、超音波検査を3~4週間ごとに実施する。







著者:
矢野邦夫(浜松医療センター 感染症内科 副院長 兼 科長)

INFECTION CONTROL25巻3号の掲載記事です。状況を考慮し、刊行に先立ちWEBに掲載しています。
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