山野穴太のいまどきナースこぼれ話

2016年07月29日
第102回 病院内食堂、レストランについて

わが住む鄙(ひな)でも(コンビニでバイトはしてないけど、芥川賞とれそうな書き出しやな)、梅雨明けを気象庁が宣言した。そして、その翌々日に雨が降った。これをもどり梅雨というらしい。季語としては風情があるが、単に気象庁が早とちりの梅雨明け宣言をしただけではないのかな、ねぇマンソン。と、クーラーのきいた部屋で、コンビニバイトもせずに寝転がっているマンソンに話しかける。マンソンは、保護したときマンソン裂頭条虫が寄生していたのと、名前も底をついたので、このような命名となったのだが、名付けてみると、シャーロックホームズの助手のワトソン君みたいで、ちょっとしゃれている。そのマンソンは、いつも電子レンジの上で寝る。新入りのとき、左耳の後ろを派手に噛まれたため、それ以後は、やや高い場所で周囲を警戒しながら寝ている。面倒なのは、足を電子レンジの扉に垂らしているので、電子レンジは汚れるし、何より使いにくいのであるが、そこはまったく考慮してくれない。

 さて、元ヒヨコのメール。
 先日、某病院内に有名ホテルが運営するレストランがオープンしたというニュースを見たそうだ。最近、有名シェフの監修だったり、有機野菜などにこだわったり、薬膳料理などを提供するレストランを併設している病院が増えてきている。外来通院患者のみならず、入院患者もメニューから選べるところもあるらしい。要は、「私らが勤務する病院からしたら雲泥の差でうらやましい」といった、ヒヨコの愚痴メールである。
 
 それはそうと、病院レストランの充実度が、患者数だけでなく、入職希望の医療従事者や、すでに働く職員の満足度に影響を及ぼすのだろうか(おっちゃん、唐突なフリでんな)。残念ながら、小生はそんな有名レストランを併設した大病院に勤めたことがない(そもそも、給食というか、タダ飯にありつけるのは当直のときくらいという、職員待遇が悪い病院にしか勤めたことがない)ので、職員に影響を及ぼすかどうかはわからない。昼飯などは、いわゆる病院食堂で、「おばちゃん、卵入れてな」と言って、特製インスタントラーメンをかき込んだ記憶しかない。有名レストランを併設して、病院が場所代を稼いだなら、院長さま、給与を上げてくださいなと言いたいが、それも無駄とわかっているから、どうぞご勝手にである。

 ネタを収集する見返りとして飲み代を貢いでいる元ヒヨコたちに聞いてみても(かっこつけてアンケートと言いなはれ)、ほとんどわが輩と同じ意見であった。日ごろは弁当持参や、近くの配達弁当屋の弁当を食べたり、安い職員食堂(定価が安いだけで、病院が補助を出しているわけでもない)を利用したりしている。元ヒヨコに言わせると、「患者さんやその家族が自己責任で何を食べようと止めようもないが、ただ、喉に物を詰まらせたり、糖尿病を悪化させたりして、うちらの手を煩わせないでいただきたい」とのことである。本人たちは、そんなレストランがあっても、毎日利用できるものではないし(そういうところで食べるのが板についているというか、日常茶飯事の方々もいるかもしれないが)、かといって、たまに豪華にしたいなら、病院のそんなレストランで患者や医者の目を気にしながら食事をするより、外の有名レストランでのんびり食べるという(ただし、バイキングランチですがね)。
 さらに口の悪い元ヒヨコは言う。「だいたいですね、有名レストランが入っているというホテルの職員が、わざわざそれを自慢しますか。鼻高になって有頂天になりますか。同じように、病院の職員が『うちには某有名レストランの支店があるのよ』と自慢なんてしませんよ、ばかばかしい。自慢するのは、せいぜい理事長兼院長先生くらいでしょう。自慢げに看護部長や事務長を引き連れて、食事をして、最後に事務長が気をきかせて、病院宛の領収書を書かせるくらいでしょう(笑)」とバッサリ。「我々がハッピーになるのは、レストランが増えることより、自分の給与が増えたときだけです(ごもっとも、ごもっとも)。そもそも、一般の患者さんが、わざわざ病院に来てまで、そんなレストランで食事をしますかね。自分の病気を心配して、ご飯ものどを通らないでしょう。せいぜい、検診や人間ドックの患者さんや見舞客が、見栄や興味本位で利用するくらいでしょうに」(いやいや、全くその通りである)。

 有名レストランの併設は、他の病院との差別化を図ることで、患者獲得につなげたいとか、職員満足度をあげて人材を定着させたいといった病院側のねらいがあるのだろうが、少なくとも元ヒヨコたちにとっては、好評とはいい難いようである。とはいえ、こうした大きな病院の新しい取り組みや福利厚生の充実などは、純粋に「うらやましい」と思うようだ。なんとも複雑である。