山野穴太のいまどきナースこぼれ話

2017年05月10日
第111回 無礼講って何だろな

世の中では連休が終わった。しかし、我々のような医療現場では、そんな休みなど、はなからない。猫はゴールデンウイークなど関係なく腹が空くし、おかげで、朝夕ときに夜中までエサやりで大忙しである。ボランティアの方も気になるとみえて、連日顔を出してくれた。無給で、エサの買い出しから猫部屋(すでに、わが家のすべての部屋が猫部屋になっているが)の掃除はおろか、お友だちに声をかけて、毛布やマットなどをせっせともらってきてくれる。猫にもったいない品は、当然、わが輩も使わせてもらう。
 さて、うれしいことが一つ。いよいよ桃のエリザベスカラー(傷口を舐めないようにする保護具/写真)が取れる。桃は2カ月前、右目内容物が露出し、失明。保護したときから右角膜炎で治療していたが、たぶん手でこすったのであろう。右目摘出で『女・森石松』になるところであったが、角膜縫合、排膿、眼瞼縫合で様子を見ていた。当然、エリザベスカラーをつけて、ゲージに入れて隔離。連日の抗生物質の内服、点眼(といってもボランティアさんが行ってくれた)でどうにか病変の固定ができ、眼球摘出は免れた。右目失明状態で、森石松には変わりないが、派手に顔が変形することはない。よく耐えてくれた。不憫だが、仕方がない。エサに不自由はさせないから、長生きしてくれと祈るだけである。

 さて、本題。主任クラスの元ひよこからの愚痴である。
 この時期、歓迎会が続くが、その幹事の不手際というか、意識する・しないにかかわらず、非礼で無作法な行いが目について、注意するのに疲れる。しかも、ときに「だって、無礼講のフランクな会でしょう」とか「それって一種のパワハラですよね」と逆ねじを食らわせられることもあり、どうしたものかと悩んでいるという。

 まず、問題の一つは無礼講の意味である。これは全く難しい話ではない。無礼講って何とでもネットで検索してみれば、あちこちに書いてある。従って、おじさんは今日は出る幕がないので、膝の上のブス尾君をなでなでしながら、コンピュータの中古でも探すとしよう。では、さようなら……といけば怖い編集者さんから叱られるので、しかたなく書くこととする(それって、パワハラだよね? ね、ブス尾君! ブツブツブツ……)。
 
 そもそも、無礼講とは忘年会・新年会をはじめとする飲み会の席で、「肩書きにとらわれず宴席を楽しもう、酒や料理を楽しもうよ」という意味合いで使う言葉である。
 ただし、はっきり言って、形式的に述べられるだけの場合がほとんどであると理解したほうが安全である。しかも、これは上司や先輩が言うことであって、幹事役のぺえぺえが言うことではない。ましてや、事前の案内に「無礼講ですから、お気軽にご参加ください」と書くなど、あり得ない。もちろん、無礼講だからといって、「ねえ部長、髪の染め色似合わないですよ」とか、「髪薄くなりましたね、いいウイッグ屋紹介しますよ」などと、しっとりとした栗毛色(自称)に髪を染めた看護部長をいじくるのは御法度である。当然、その場の振舞い方によっては、「○○は酒グセが悪い」とか、「空気の読めないお馬鹿さん」とレッテルを貼られて、上司や部下、同期とのその後の人間関係に悪影響を及ぼすこと大である。
 
 しかも、まぁいつの時代も酔って上役に絡む若手は必ずいるものだが、それを上手にたしなめるのも幹事の役目なのに、「まぁ無礼講だから」と許したり、一緒になって調子に乗る輩もいて困る。幹事のペえペえが火をつけてどうする。結果、気まずい微妙な空気が漂い、仕切り上手な中堅どころが尻ぬぐいをさせられるなんてことも少なくない。
 
 問題のもう一つは、無礼講とも関連するが、宴会の席順である。「結婚式の宴席の席順じゃあるまいし、無礼講、無礼講、どこに座ってもいいじゃん」では困るというのを、若い幹事は理解していない。
 席順は、お偉方が「今日は無礼講ですから、気楽にやってください」と挨拶するまでは、ある程度上下関係や役職に応じた席順で決まっているのが普通である。幹事のぺえぺえがその場で「無礼講ですから」と、主任クラス以上を下座に指定したり、仕事その他であらかじめ遅れるのを事前に連絡しているにもかかわらず、目上の人をいわゆる上座に案内せず、入り口付近の末席に、「あ、ここでいいですよね」みたいな感じで座らせるのは不愉快であると、元ヒヨコの主任どのは怒る。
 そういった社会人として当たり前の“暗黙ルール”みたいなものを平気で無視するような常識のない者や、空気を全く読もうとしない若手幹事が多くて、そんな非礼・無作法にハラハラ・イライラさせらるのだそうだ。

 まあ、怒って当然と思うのは、わが輩も歳をとった証拠であるが、そもそも宴会にはほとんど出ないので、気のきいたことも何も言えず、膝の上の猫をなでながらお茶を濁した連休であった。