山野穴太のいまどきナースこぼれ話

2017年03月07日
第109回 退職の時期

もうすぐ春である。一般には出会いと別れの季節であるが、70歳に近い小生には、人間との出会いはもうあまりなく、もっぱら別れの季節である。もちろん、猫とは出会いも別れも日常茶飯事であるが(笑)。
 さて、最近、仕事場の駐車場できれいな三毛猫を保護した(そこからは、すでに20匹近くをわが家に連れて帰っているが、うちの偉いさんには地域猫活動に準じたエサやりが不評で、わが輩は毎年クビ候補リストにあがっている)。その仔を検査と避妊手術のために動物病院へ連れて行ったら、すでにおなかに創があり、避妊手術後の状態であった。耳カットをしていなかったので外見ではわからず、麻酔をかけて、剃毛して、初めてわかったそうである。蚤とりや、寄生虫駆除をしてもらって帰宅したが、避妊手術料の半額が飛んだ。まあ、麻酔までかけたから仕方がない。
 そうすると問題は、どなたかの飼い猫ではないか、ということである。飼い主さんは、「うちのミケが1週間も帰らない、どうしたことか」と心配しているかもしれない。早速、「この仔を保護しています」のポスターを作って、あちこちに貼らねばならない。もちろん費用は請求できないし、場合によっては文句の2つ3つももらうかもしれない。でも、飼い主さんのもとに帰るのがミケの一番の幸せだから、頑張って飼い主さんを捜すことにする。これも、出会いと別れである。

 さて、本題
 先日、隣の県の大病院に勤務している元ひよこからメール。結婚して、他県に移るとの挨拶である。ご丁寧に、引っ越す前にわざわざ、お別れの挨拶に伺いたいとのありがたい内容であった。思えば、在学中も卒業後も、それほど面倒をみたつもりはないが、何かと連絡してくれるし、このシリーズのネタも何度か提供してくれた。日々の挨拶はおろか、メールアドレスや住所の変更通知も出さずに自然と連絡が途絶えることもめずらしくないこのご時世に、ありがたい話である。某日曜日に来てくれるとのことで心待ちにしていたが、日曜日は3月末まで勤務が入っているのでと、急遽、土曜日に変更になった。小生が土曜日も夕方まで勤務だと言うと、わざわざ時間をそれに合わせて、軽自動車で数時間かけて来てくれた。まったく律儀である。

 ただ、退職する寸前の日曜日まで勤務とは、どういうことだと気になって聞いてみた。学校卒業後すぐに入職して、真面目に勤めて6年。最低でも2週間くらいは有給休暇があると思っていたが、3日しか取らせてもらえなかったとのこと。たった3日で引っ越しをして、新たな住居を借りて、自分も新しい病院に入職するなど、到底無理であるとのこと。まったくその通りである。

 そもそも、国の法律でも、病院の規則でも、有給休暇はあるはず。今年度の有給休暇はまったく使っていないのにと不満そうであった。しかも、12月に辞めた先輩は、きっちり休暇を取って、ほとんど1カ月出てこなかったらしく、人によって差をつけられて不愉快だという。

 有休取得は当然の権利なのだから、看護部長なり、事務長なりに交渉するようにとアドバイスしたが、それも煩わしいし、病棟も人手不足で大変だからと泣き寝入りである。おそらく、現場の師長殿が勝手に決めて、上層部には「本人が最後まで働きたいと言うのを、やっとの思いで説得して、3日は取ってもらいました」云々とでも報告したのであろう。あるいはそのようにしないと、自分の管理能力を問われることになるのかもしれない。

 まったく、本人にとって、新たな人生の門出と職場の再出発という大事な時期、嫌な思いで辞めたくないという気持ちを逆手にとってのブラック企業である。目先の人手不足に精一杯という現場管理者の悲痛さも理解できなくはないが、お偉方にとっても、この病院は退職時の有給休暇も十分にくれないなんて悪い噂がネットで流されでもしたら、逆に損だと思うのだが、如何なものか。

 追加で、たまには管理者の皆さまにわかりきったアドバイス。その元ひよこは、ご主人の会社にも大きな附属病院があるが、そこは3交代制だそうで、今までの2交代制に体が慣れているからと、あえて2交代の病院を選んで再就職したそうである。このような求職者もいるから、勤務体制はちゃんと募集要項に明記することが必要ですよ(笑)。