インフェ速報

2015年06月10日
■必読■MERSの最新情報<2015年6月16日修正>

★どんなウイルス?
コロナウイルスの一種で、2012年に発見されました。中東ではじめて患者が見つかったことから、中東呼吸器症候群(Middle-East Respiratory Syndrome)と名前がつき、略してMERS(マースまたはマーズ)と呼ばれるようになりました。ウイルス名としては、MERSコロナウイルス(MERS-CoV)です。

★どこで流行しているの?
2013年からサウジアラビアを中心に、中東諸国で患者が発生しています。2014年3~4月に大きな流行となり、少なくとも数百人の患者が確認されています。その後、2015年にかけて、月に10~20人程度の感染者が確認されています。
2015年5月下旬、中東のバーレーンから帰国した韓国人が発症し、入院した病院の患者、見舞いの人などに感染が拡大しています。6月15日現在、150人の感染者が確認されていて、数千人が接触者として健康監視対象になっています。

★症状と重症度、治療は?
潜伏期(2~14日、通常5日程度)を経たのち、発熱、咳、痰などの症状が出て、次第に肺炎になります。呼吸不全から人工呼吸器管理が必要なケースもあります。中東で確認された患者の致死率は30~50%とされていますが、これ以外にも診断されていない軽症者が多数いるものと考えられており、致死率はもっと低いかもしれません。韓国では150人中これまでに16人が死亡しています。また、MERSウイルスに対する有効な治療法はありません。

★感染経路は?
サウジアラビアをはじめとする中東での流行は、ヒトからヒトへの伝播の他に、病原体保有者と考えられているラクダとの接触によっても発生していると考えられています。韓国での流行は、基本的にヒトからヒトへの伝播であり、病院内での感染拡大はありますが市中での感染はないとされています。

★今後は?
韓国では接触者を徹底的に洗い出し、健康監視対象としています。これによって感染を抑制・制圧できる可能性があります。当初情報をあまり公開しなかった韓国政府も、患者の入院している、あるいは感染伝播がみられた病院の名前を公開するなど、ようやく情報の透明性が保たれるようになってきました。WHOの調査チームも韓国入りしており、事態の収拾に向けて関係者が最大限の努力を払っています。事態の推移を見守りたいと思います。

★我々は何に注意すればよいの?
発熱や呼吸器症状のある患者さんには必ず外国への渡航歴を聞きましょう。韓国や中東から帰国後2週間以内の場合は、緊急を要する場合を除き診察や処置などは極力行わず、患者さんを他の患者さんから離れた場所に誘導し、直ちに管轄する保健所に相談しましょう。

<2015年6月16日修正>

著者:
森兼 啓太
(山形大学医学部附属病院 検査部 部長・病院教授、感染制御部 部長)


INFECTION CONTROL8月号にて掲載予定記事です。
状況を考慮し、刊行に先立ち、WEBに掲載しています。

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